兵庫県豊岡市の出石で焼かれたこの筒釜は、茶道具としての実用性と美術品としての鑑賞性を兼ね備えた逸品です。表面に浮かび上がる山水文の浮き彫りは、まるで水墨画を立体化したかのような繊細さで、岩山と竹林が織りなす東洋的な情景を静かに物語ります。
出石焼は江戸時代中期に始まり、白磁の美しさで知られる伝統的な焼き物です。この筒釜は、円筒形の端正なフォルムに両側の環状の耳を配し、蓋には瑪瑙のような美しい摘みを据えています。木箱が付属しており、大切に保管されてきた品であることが窺えます。

詳細
出石焼は但馬地方を代表する陶磁器で、磁器の産地として約250年の歴史を持ちます。白い磁肌と精緻な細工が特徴で、「出石白磁」として茶人や文人に愛されてきました。この筒釜は、伝統的な茶釜の形式を出石焼の技法で表現した作品です。
表面に施された山水文は、浅い浮き彫りによって表現され、触れると指先に優しい凹凸を感じます。遠くに霞む山々、手前の竹林、そして岩場の構図は、中国の文人画の伝統を継承するもので、茶室の精神性と深く呼応します。蓋の摘みに用いられた天然石は、温かみのある色合いと斑点模様が印象的です。木箱は保管用として、この筒釜が骨董品として大切に扱われてきた証となっています。

おすすめの用途
茶道具としては、炉や風炉に据えて湯を沸かす茶釜の役割を果たします。ただし、出石焼の繊細な素材を考慮し、実用よりも飾り釜として床の間や棚に飾ることをお勧めします。茶室の設えにおいて、掛け軸や花入れとともに季節感を演出する道具として最適です。
また、煎茶道具のコレクションや、和の骨董品を集める方にとっても価値ある一品となるでしょう。使用しない時も、その美しいフォルムと山水文の意匠が、空間に静謐な風情を添えます。茶道を嗜む方への贈り物としても、深い教養と美意識を伝える品格を備えています。

インテリアコーディネート提案
【茶室・和室スタイル】
床の間に置き、季節の掛け軸や花入れと取り合わせることで、格調高い茶の湯の空間を演出します。畳の上に敷いた袱紗と組み合わせれば、伝統的な茶道具としての存在感が一層際立ちます。
【現代和風スタイル】
シンプルな木製の飾り棚やサイドボードに配置し、間接照明で山水文の陰影を浮かび上がらせます。モダンな空間に和の要素を加えるアクセントとして、洗練された佇まいを見せてくれます。

品質・状態について
リユース品のため、新品と比較して使用感がございます。
リペア痕や経年変化による色ムラがある場合があります。
使用に伴う小傷や擦れ跡がある場合がありますが、使用に支障はありません。
写真と実物の色調に若干の差異がある場合があります。